社会人であれば、誰しも一度は契約書と向き合う機会があります。ビジネスであれば業務委託や秘密保持を結ぶ際に、またプライベートであれば賃貸契約や売買契約を結ぶといった場面で契約書が必要となります。もちろん、特別な職業でなければ、通常は書面自体を作成する事はなく、定型に則って作成された契約書を精査して、内容に納得すれば合意を行うだけとなります。ここで重要となるのがはんこ(印章を指します)です。日本では契約書の様々な部分において使用される事となり、承認を行なったという証明とされますので、それぞれの意味を正しく理解しておかなければ恥を書くと同時に損を被るリスクすらあります。それでは契約書に用いられる押印の種類と意味について順に見ていきましょう。
先ず契約書全ての内容に合意するために用いられるのが、署名・捺印となります。自筆で記名を行い、そばに押印を行います。書面の中で用いられる押印としては最初に「契印」があります。契約書が複数に渡る場合に、後で手が加えられない様にするために、製本した書面の綴じ目ごとに押す印を意味します。次に「割印」が挙げられます。これは原本と写しや正本と副本を作成する場合に、やはり改ざんなどの不正行為を防ぐ目的で、1つの印がそれぞれの書面に半分づつ写る様に押す印を指します。また、文章や記載を訂正する場合に用いるのが「訂正印」です。対象箇所を二重線で消して余白に正しい文言を記し、欄外に「何文字加筆、何文字削除」などと記載して、そばに押印します。しかし訂正印は箇所ごとに関係者全員の押印が必要となりますので、その煩雑さを避けるために用いられるのが「捨て印」です。予め欄外に関係者の押印を行なっておく事で、訂正印の代わりとします。ただし本来捨て印は、相当な信頼関係のある当事者同士でなければ使うべきではなく、場合によってはこれを悪用して契約書の内容をすり替える事も可能だという事を理解しておきましょう。また契約書の文章の最後についても、勝手な加筆などを防ぐ目的で「止め印」と呼ばれる押印を行います。
ところで、それぞれの押印に使える印章は異なるのでしょうか?署名・捺印に用いられる印章は契約の軽重によって、印鑑登録を行なった実印や認印などを使い分けます。それ以外の押印については、使い勝手によってサイズの大小などを使い分けることはありますが、特別に使用しなければならない印章は決まっていません。しかし基本的に契約書で用いる印章は、スタンプ印や三文判は避けるのが通常です。
ここまで見てきた様な契約時の知識がなければ、思わぬ損を被る可能性がありますので、十分に注意しましょう。